2026/02/13 08:30


Day & Coffee でコーヒーをお出しするとき、透明のグラスを選んでいます。
いちばんの理由は、とてもシンプルです。コーヒーを、色ごと楽しんでほしいから。
浅煎りと深煎りでは、まず色が違います。さらに同じ焙煎度であっても、豆が変わればその色合いは少しずつ変わっていきます。

明るく透き通るような色。
奥行きのある少し濁りを含んだ色。
黒に近いのに光を通すと赤みを帯びる色。

それらはすべて、そのコーヒーがもっている個性の一部です。ジューシーさやコクの深さ、軽やかさや余韻。味として感じる前に、すでに視覚の中にヒントが含まれています。透明のグラスに注ぐことで「今日はこんな表情なんだな」と自然に気づける。私たちは、その入り口を大切にしたいと思っています。

もうひとつ、ガラスを選んでいる理由があります。
それは飲み口の情報がとても少ないこと。カップの素材や厚みは、思っている以上に味の印象を左右します。厚みのある陶器は、口当たりがやわらかく、温度や風味を包み込むように伝えてくれます。一方で比較的薄手のガラスは、唇に触れたときの存在感が控えめです。その分、液体そのものの質感や、舌に当たる感触、甘さの出方が、よりダイレクトに伝わってきます。
Day & Coffee が大切にしている、コーヒーの「甘さ」や「透明感」は、このダイレクトさの中でいちばん感じやすくなると考えています。

ガラスは、陶器に比べると温度変化を感じやすい素材です。これは事実です。
ただしそれは「すぐに冷めてしまう」というよりも、温度の変化が正直に伝わるという性質に近いものです。
コーヒーは、温度によって表情が変わります。熱いときには香りが前に出て、少し落ち着くと甘さが広がり、さらに温度が下がると味の輪郭がはっきりしてくる。透明のグラスは、その移ろいを隠しません。私たちは、一定の温度を保ち続けることよりも、時間とともに変わっていく味を楽しむことも、コーヒーの魅力のひとつだと考えています。

透明のグラスは、演出のための選択ではありません。色も、香りも、口当たりも、温度も。コーヒーがもっている情報をできるだけそのまま届けたい。そのために余計な要素を足さない器を選んでいます。
今日の豆の色。今日の焙煎の表情。今日の一杯がたどる変化。それらを丸ごと味わってもらえたら嬉しいです。Day & Coffee が透明のグラスを使うのは、コーヒーを目立たせたいからではなく、コーヒーに正直でいたいからです。


Speaker:北嶋孝祐
Interview & Text:追沼翼